日本の伝統的な衣装である「着物」。
美しく着こなすことができれば、それだけで一目置かれることもあります。
しかし、着物を着こなすためには、着付けを知っていればよいというわけではありません。
着物には「格」という観点から様々な種類があり、それぞれで着用シーンが決まっています。
もしも場違いな着物を着てしまっていると、それだけでせっかくの着物姿が台無しとなってしまいます。
そこで今回は、「着物の種類と最適な着用シーン | 失敗しない着物の選び方」と題しまして、着物選びのポイントをご説明いたします。
目次
着物の格と帯
着物を着用する際には、ドレスを着用する時と同様に、季節やどのような場所に参加するかによって使い分ける必要があります。
これが、着物の格であり、知識として知っておくことが求められます。
着物は、「フォーマルな着物」と「カジュアルな着物」とに分けることができます。
フォーマルな着物とは、格が高く、結婚式やパーティーなどに呼ばれた際に着用する礼装に位置する着物です。
素材は、おもに絹を使用し、織り上がった白い生地に色や柄を後から染める「後染めの着物」になります。
柄の違いや紋の有り無し、紋の位置によっても格が変わります。
フォーマルな着物が柄の付け方によって呼び方を変えるのに対して、カジュアルな着物は江戸小紋・小紋以外は色付けしてから織り上げる「織りの着物」となり、その他は木綿やデニムといった素材によって種類分けされています。
そして、着物だけではなく帯にも格というものがあります。
帯の種類は、袋帯・名古屋帯・半幅帯の三つに大別され、それぞれで使い分ける必要があります。
袋帯とは、袋状におられている帯のことで、二重太鼓に結ぶことが通常です。
柄行は、帯全体に柄が入っている「全通柄」と、胴に巻きつけた時に表から見えない部分だけ柄を付けない六通柄、お太鼓と前帯の部分だけに柄付けされたお太鼓柄の三つに別れます。
金銀の糸が織り込まれたものが、最も格が高く礼装・正装に用いられるものです。
名古屋帯は、胴に巻く部分を半幅にしている帯であり、一重太鼓に結ぶことが通常です。
織りと染めの帯があり、セミフォーマルからカジュアルまで使用できます。
半幅帯とは、袋帯の半分の幅の帯であり、様々なバリエーションがあり、結び方も様々です。
カジュアルな場面で使用することができます。
最も格の高い着物 ~黒紋付・黒留袖・色留袖・振袖~
最も格の高い着物として、順に黒紋付、黒留袖、色留袖、振袖をあげることができます。
これらの着物は、礼装・正装にあたる着物です。
黒紋付は、黒一色の無地で五つ紋が入っており、最も格式の高い着物です。
未婚・既婚を問わずに着用できる最高礼装で、華やかな袋帯とともに着用します。
第一礼装にあたる着物が、黒留袖です。
既婚女性の第一礼装にあたり、黒地で上半身に柄はなく、すそ部分にのみ縫い目で柄が繋がる絵羽模様が入り、背中・両後ろ袖・両胸元の合計5つの部分に紋が入っています。
結婚式などの人生の通過儀礼の際に着用する着物であり、新郎新婦の母親や仲人夫婦、親族に当たる既婚女性が着用します。
帯は、喜びが重なるようにというを縁起を担いで二重太鼓で結ぶ袋帯を選びます。
黒留袖と同格の第一礼装となる着物が、5つ紋の入った色留袖です。
黒留袖と同様にすそ部分に模様がありますが黒地ではありません。
着用シーンは黒留袖と同様で、親族の女性は既婚・未婚を問わずに着用できます。
3つ紋、1つ紋などと紋の数を減らすことによって訪問着や付け下げと同じ場面でも着用ができるようになります。
格式よりも華やかさを意識した着物であり、帯は黒留袖と同様に袋帯を結びます。
そして、未婚女性の第一礼装となる着物が振袖です。
華麗な模様と長い袖が特徴であり、袖丈が長いほど格式が高く感じられます。
成人式や結婚式、フォーマルなパーティーなどで着用する着物で、帯は変わり結びができるように全通柄か六通柄の袋帯を選んで結びます。
華やかな場所で着用する着物 ~訪問着・付け下げ・色無地・お召~
第一礼装というほど格は高くありませんが、華やかな場で着用することになる第二礼装(略礼装)として着るべき着物としては、訪問着や付け下げ、色無地、お召(御召)があげられます。
訪問着とは、上半身とすそに絵羽模様が入る着物です。
第二礼装として着用され、結婚式や披露宴、パーティー、お見合いや茶会などといった華やかなお呼ばれの場所に着用していきます。
未婚・既婚を問わずに着用でき、袋帯を結びます。
訪問着よりも格は下がりますが、第二礼装としての役割を持つものが付け下げです。
絵羽模様ではありませんが、柄がすべて上を向くように染められている着物であり、訪問着と同格のものもありますが、訪問着よりも簡略化しています。
着用シーンも訪問着と同じであり、袋帯か織りの名古屋帯を着用することになります。
色無地は、紋があれば華やかな場で、なければおしゃれな外出着としても着用できる着物です。
無地一色で染められた着物であり、袋帯か名古屋帯を結ぶのが通常です。
お召(御召)も、略礼装として着用できる着物です。
御召縮緬とも呼ばれ、お呼ばれの場やおしゃれ着として使用できます。
絞りが強くはっきりと表れます。
カジュアルな場面で着用できる着物 ~江戸小紋・小紋・紬・浴衣~
正式な場所ではなく、おしゃれ着や普段着として着用することができる着物も数多くあり、江戸小紋や小紋、紬や浴衣が当てはまります。
江戸小紋とは、遠目では見えないような細かな柄のある単色の着物で、小紋は全体に同じ模様がある着物です。
江戸小紋は格がありますが、お稽古やおしゃれ着として着用でき、名古屋帯、半幅帯を結びます。
紬とは、色糸から織られた絹織物です。
縞や格子の模様があり、普段着やおしゃれ着に着用できます。
通常は、金銀の入らない名古屋帯や半幅帯を結びます。
浴衣は、木綿生地で作った夏に着る着物です。
くつろぎ着であり、気取らない場所に限り着用することができ、帯は半幅帯や夏用の名古屋帯を合わせます。
TPOに合った着物と帯を選ぶ
いかがでしたか?
着物と帯には、様々な種類があり、それによって格が変わります。
その場に合った格の着物を選んで着用すれば、それだけで美しく見えるものですが、種類と格を考えずに着用してしまうと、場違いな着物を着ていることとなり、失礼にあたる可能性があるので注意が必要です。
どのような場所に、どのような立場で出かけるのかをしっかりと認識したうえで、最適な着物を選んでくださいね。